うたごたつ
プロジェクト
うたごたつ短歌賞 結果発表
うたごたつ短歌賞の各選者賞、佳作の発表です。
1週間と短い投稿期間でしたが、たくさんのご応募ありがとうございました!
(応募総数 49名、118首)
*選者賞に選ばれた方には、順次賞品をお送りいたします。お手元に届きますまで今しばらくお待ちください。
伊藤一彦 選
≪総評≫
いい作品が多かった。読んでいて面白かった。
選者賞の「ゴリアテ」の作、上の句の奇想に近い大胆な表現、そして、下の句の「生姜」は上の句との段差に読者を笑わせる。「ぽかぽか」は生姜を握りしめている作者自身の肉体だろう。ユニークなぽかぽかだ。
佳作の「炒飯」の歌、「天球と相似によそった」の表現が見事なユーモアで、結句の「夜中」も生きている。
同じく佳作の「産毛」の歌、思いきった比喩の「包っぽかった」が新鮮な恋の歌である。
同じく佳作の「骨だけ」の歌、ぽかぽかでない二人の関係がリアルに伝わって心に残った。
皆さんのいっそうの健詠を期待している。
選者賞
ゴリアテを仕留める気持ちで握ったら生姜も冬の鈍器でしょうか 草薙 東京都
佳作
天球と相似によそった炒飯がほかほか照らすひとりの夜中 ふた 宮崎県
佳作
公園のひかりに産毛が透けているきみのほっぺは包〈パオ〉っぽかった あの井 福岡県
佳作
骨だけになればなかまでぽかぽかにしてくれるっておもうじゃないの 金森人浩 東京都
平出奔 選
≪総評≫
「ぽかぽか」という難しいテーマで詠まれた作品の中から選考していく過程で、とりわけ心に残ったのは「ぽかぽか」と同時に「ぞくぞく」もしてくる作品が多かったように思います。選者賞には、「骨だけ」の先に「ぽかぽか」を見出す新鮮な視点を示すと同時に、否定的な言いさしの結句で更に「ぞくぞく」させてくれたこの一首を選びました。
もちろん、まっすぐに「ぽかぽか」で貫いてくる作品にも魅力的な歌がたくさんあり、短歌の面白さを改めて感じさせてもらいました。この度はご応募ありがとうございました!
選者賞
骨だけになればなかまでぽかぽかにしてくれるっておもうじゃないの 金森人浩 東京都
佳作
お試しにみかん一個をこたつの中へ隠したままだ四十年前 ぼう まゆみ 大阪府
佳作
公園のひかりに産毛が透けているきみのほっぺは包〈パオ〉っぽかった あの井 福岡県
佳作
返してよ言葉も置いてきたピアスも背中ぽかぽか血管あいた 江間あやせ 東京都
久永草太 選
≪総評≫
多様な「ぽかぽか」の品ぞろえ、楽しく選考した。ゴリアテの歌、ダビデの気持ちで握る生姜は、免疫力アップで風邪を倒すか、はたまた恋人の胃袋を掴むか、想像が膨らむ。ベビーバスの歌、沐浴をさせた「はずの」子、というとぼけ方が、20年のあっという間であったことを思わせる。「センパイ」の歌、こちらも年月のはやさの歌だが、35年をも巻き戻してしまう先輩の顔の安心感がある。選者賞は湯ざめの歌に差し上げた。湯ざめする人にしか味わえない「宇宙の風」を知る「あなた」と私はやはり別物だけれど、それでも興味を持ち合うから人は繋がれるのだろう。
選者賞
湯ざめしたことがないからわからないあなたの言った宇宙の風が 武田ひか 東京都
佳作
ゴリアテを仕留める気持ちで握ったら生姜も冬の鈍器でしょうか 草薙 東京都
佳作
ベビーバス流しに嵌めて沐浴をさせたはずの子成人したり 西村三智 宮崎県
佳作
「センパイ」と呼べば先輩の顔をする先輩 35年経っても 門田祥子 宮崎県
歌王子あび 選
≪総評≫
初めて選者をさせていただけることになり、大丈夫なのだろうか…と思っていたのも束の間で「ぽかぽか」をテーマにした応募短歌118首、すごく楽しく読ませていただきました。選者賞としましては「風に吐く「誰かキーパー代わってよ」取り残された綿毛の気持ち」を選ばせていただきました。風に乗って飛んでいけず取り残されたしまった綿毛とゴールの前で佇む作者の姿がリンクして、吐息多めの「代わってよ」という声がな んだか取り残された綿毛を飛ばしてくれるようなあたたかい予感を感じました。ぽかぽかな短歌たちを読ませていただいて一足早く春がやってきました。貴重な経験をありがとうございました。
選者賞
風に吐く「誰かキーパー代わってよ」取り残された綿毛の気持ち 川﨑裕也 宮崎県
佳作
寒いから毛布を纏い嗅いでみるサンタがくれた箱のにおい 筑波凜 茨城県
佳作
湯ざめしたことがないからわからないあなたの言った宇宙の風が 武田ひか 東京都
佳作
「おかわり!」と大声で言える人だけが抜ける剣だよミニ万国旗 川﨑裕也 宮崎県
前田康生 選
≪総評≫
初めての選者体験、じっくりと118の切り取られた世界に浸りました。まず選者賞の歌、先輩との35年間の間柄の雰囲気がよく伝わってぽかぽかとしてきます。「働いて」の歌は 、労働と歌作のライフサイクルを端的に歌って面白いです。「信じたい」の歌は生命感が躍動する秀逸の歌だと思いました。「ゆたんぽ」の歌は、語感を大切にされている作者の心情が伝わってきます。以上皆さまの歌を詠みながら、改めて短歌の良さを認識しまた時折り歌作に向き合っていきたい心持ちになりました。
選者賞
「センパイ」と呼べば先輩の顔をする先輩 35年経っても 門田祥子 宮崎県
佳作
働いて短歌を作る土曜日も悪くはないと思ってみたり ワカちゃん 宮崎県
佳作
信じたいものだけ信じる日のように豆苗が窓に向かって曲がる あの井 福岡県
佳作
ゆたんぽのぽのぽかぽかをいくたびもしづかに撫でるあなたのこゑよ 有村桔梗 新潟県
井口寿則 選
≪総評≫
「ぽかぽか」をテーマに、ほっこりする歌や、くすりと笑える歌など、多種多様な歌が届きました。選者賞はなんだかむっとしている表情が見える歌です。淡々と事実を述べているだけなのに、「ストーブがあって他人がくる」という身も蓋もない下の句から「わたし」の人となりがわかるような気がします。「なんかそんとき超きみだった」、ラフな口調でめっちゃLOVEを伝えているところがキュートでした。「脚がお湯になる」という表現は実際に使ってみたくなります。「煮込むなら」の歌は、句読点を使う律儀さも相まって、本気でこのことについて考えたんだろうなと思いました。
選者賞
教室の角がわたしの席なのにストーブがあって他人がくる 筑波凜 茨城県
佳作
外あんま寒くないって思ったらなんかそんとき超きみだった あの井 福岡県
佳作
足湯へと浸した脚がお湯になるまでは秘密を喋らずにいる 岡田奈紀佐 愛知県
佳作
煮込むならお砂糖風呂にして欲しい。お塩はちょっと、痛そうだから。 恒松歩美 宮崎県